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超短編小説  108物語集(継続中)

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 ピッ!
 大介(だいすけ)は出張先のホテルでシャワーを済まし、何気なくTVを点けた。するといきなりの、「守ります!」、こんなシーンが目に飛び込んできた。ああ、なるほど、これが今話題の青春ドラマかと缶ビールを呷(あお)りながら見入ってしまった。
 だが明日も早い。杏奈のセリフ、「だけど嬉しかった」の後を観ることを諦め、スイッチを切り、ベッドへと潜り込んだ。

「俺の高校時代と違うよな。もしあの頃に、あんな告白チャンスがあったなら、俺も夕子(ゆうこ)に宣言してみたかったなあ」
 随分と昔のことだが、大介には夕子との思い出がある。
 夕子はドラマの杏奈とは少し違うタイプの女学生。白いブラウスがよく似合い、長い髪をそよ風になびかせていた。

 そんな夕子と一度だけデートしたことがある。別に手を繋いで歩いたわけでもなく、ただ公園の大きな木の下でたわいもない会話をしただけだった。しかし、大介は熱い想いを募らせた。
 その夕子が卒業と同時に大介の目の前から忽然と消えた。初恋は片想いで終わってしまったのか? それでもずっと夕子が好きだった。
 それにしても、なぜ卒業後、夕子を探し出し、恋のアタックしなかったのだろうか?
 現実は貧乏学生であり、甲斐性もなく、自信がなかったから。

 しかし、サラリーマンになってもう5年、今ならば夕子に対し自信をもって向かい合えるし、また彼女を受け止められる。されども時は経ち過ぎた、一体俺は……、と後悔の念ばかりが胸を締め付ける。