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超短編小説  108物語集(継続中)

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 こんな悶々とした夜から1ヶ月が経った。今日は高校卒業後初めての学年同窓会だ。もちろん、この機会に夕子にぜひ会いたい。こんな熱い気持ちで大介は出掛けて行った。
 まず、かっての悪友たちと再会した。それはとてつもなく懐かしいものだった。
それから大介は場内を見回した。
 だが夕子は、どこに?
 そしてやっと見付けた、楚々と佇む夕子を。かっての雰囲気を残したまま大人の女性になっていた。大介の胸が一気に高鳴る。

 そんな時に、幹事からアナウンスが……、
「我々の高校時代は純情な男女交際でした。それでもあの時、告げておけば良かったと後悔してる人は多いことでしょう。さあ、今なら出来る――恋の告白を――さあ、どうぞ」と。

 なるほど、これは千載一遇のチャンスだ。悪友どもは我先にと舞台へと上がる。もちろん大介も、同窓会会場で、ドラマ内の健太のごとく叫んでしまったのだ。
「今も夕子さんが大好きです。だから、僕の一生をかけて、夕子さんを……、守ります!」

 お前の年収、いくらなんだ。それが問題だ!
 ヨッ、大介、人妻を、どうするつもりなんだよ!
おいおい大介、もう手遅れだよ!

 会場に怒号の嵐が。
 されども夕子が――人妻って?

 これは大介にとって予期せぬ展開だった。あとはドラマのようには行かないものだと肩を落とし項垂(うなだ)れるしかない。そんな大介に幹事が気を利かせたのか、夕子を壇上へと呼んだ。

「夕子さん、今のお気持ちは?」
 幹事が訊くと、夕子は申し訳なさそうに……、
「大介君、私、青春ドラマの杏奈のように嬉しいわ。だけど、ちょっと……、ね」と答えた。
 これに大介は顔をキリリと上げ、男らしく告白し直すのだった。
「夕子さんを守りますより、見守ります!」

 いつの間にか大介の目には男の涙が。
 こんな事態に、「見守ることが、最上の愛だよ!」と熱い友情の言葉が飛び、あとは拍手の嵐が巻き起こった。
 だがあまりにも切なすぎる。それでも大介は確かに、見守ることこそ、初恋の人への永遠の愛だと思い直し、さらに確信するのだった。

 この瞬間こそが――青春からの卒業――だ、と。