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超短編小説  108物語集(継続中)

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 これを読んだミツ子、そこで止めて! と絶叫し、あとは気が狂ったようにナイフで絵を切り裂いた。そして、「もう会わないことにしましょう」と誠に告げ、美術室から出て行った。
 それはあまりにも突然の出来事だった。

 しかし、なぜ?
 大輔はその理由を卒業してから知った。要は誠とミツ子は異母兄弟だったのだ。
 ミツ子を女性として愛することは許されない、誠はそんな禁断の恋に落ちてしまった。そして苦悩の果てに命を絶った。
 ミツ子も深い傷を負ったことは確かだ。それでも絵を描くことに没頭し、命を繋いできたように思われる。

 そんなミツ子が初めて個展を開くという。一体どんな絵を描いてきたのだろうか? 大輔は思いきって会場へと出掛けた。だがミツ子に会うつもりはない。きっと美術室の誠の告白で、心の闇へと落ち、そこからやっと這い上がろうとしている。それを邪魔したくなかったからだ。

 想像していた通り、展示作品はあの時のブルータスのように力強く描かれ、素晴らしいものばかりだった。そして最後のコーナーへと入った時、大輔は我が目を疑った。
 あの時の3枚のデッサン、すなわちミツ子のブルータス画と大輔のロボット絵、それに加え、ズタズタに切り裂かれた、つまり―― ミツ子が大好きです。だから、大人になったら ――と加筆された誠の絵が修復され、創作の原点として紹介されていた。

 鑑賞者には理解できないだろう。だが大輔にはわかる。誠が突然思い立ち、綴ろうとした告白、そこからミツ子のすべてが壊れた。だが最近、あれは単に青春の1ページ、そう考えられるようになったのではないだろうか。