超短編小説 108物語集(継続中)
〈強盗殺人事件〉
会社部長・笠井祐司、刺し殺される!
翌々日、世間はこのニュースで騒然となった。
第一発見者は笠井の妻、愛子。午前10時頃に夫の単身赴任のマンションを訪ねたところ室内は荒らされ、和室で刺殺されていたという。
死亡推定時刻は午前4時。その前夜、笠井からストーカー行為を受けていたという悦子が話し合いに訪れた。
午後8時に友人の賢が迎えに来て、マンションをあとにした。
愛子、悦子、賢の三人は午前4時には現場にいず、アリバイが成立している。
「ちょっと奇妙だわ」
現場検証から戻って来た芹凛こと芹川凛子刑事が、何か言いたげに百目鬼刑事のデスクの前に立つ。何だよと百目鬼が顔を突き出すと、「死因は刺殺ではなく、睡眠薬を服用した後の……、ガス中毒死、だが臭いが残ってないわ」と芹凛が首を傾げる。
こんな部下の疑問に、「台所に、空の二酸化炭素の消火器が2本転がってだろうが」と百目鬼が推理の呼び水をすると、芹凛はハッと気付く。そして恥じらいもなく大声で、「それって、無臭の炭酸ガスってこと」と叫び、資料室へと消えて行った。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊