超短編小説 108物語集(継続中)
竜宮城は樹海という海にもあるんだって。俺、ちょっとズッコケたよ。
それでも美しい姫たちが舞う竜宮城だぜ、どうもそこへ行くと新たな人生が開けるらしい。だけど、その時思ったんだよ、こんな素晴らしいこと独り占めしちゃダメだと。それで誰かにお裾分けしようと、結婚願望の強い友人を誘ってもよろしいかと尋ねてみたんだ。するとご婦人はVサインでね。
「おいおい、その結婚願望の強い友人って、俺のことか?」
私が問い詰めると、浩二はニッコリ。この意味深な笑いに煽られて、「どこにあるんだよ、竜宮城は?」とついつい訊いてしまいました。
富士の樹海に大室洞穴、本栖風穴、富士風穴の三つの洞穴があるらしいぜ。その三角形の真ん中に、誰も知らない竜宮風穴というのがあるんだって。その穴の奥に煌びやかな竜宮城があって、華やかな姫たちが毎日舞い踊って暮らしてるらしいぜ。
さらに驚くことに、そこには大きな氷室があって、鎮座した氷の龍がドラゴンボールを握ってるんだって。
「えっ、それってどんな願いでも叶う如意宝珠(にょいほうじゅ)のことか?」
私が目をぎらつかせると、浩二はすかさず「お姫さまもドラゴンボールも、お持ち帰りできるんだぜ。だから直樹……、一緒に行ってくれるよな」とにじり寄ってきました。私もかなりミーハーで、「ヨッシャ!」とハズミで答えてしまったのです。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊