超短編小説 108物語集(継続中)
こんな経緯で、私たちは汗びっしょりで、白骨が転がる樹海の中を二時間彷徨いました。そして、やっと開けた場所へと。よく見ると、奥の茂みに1メートルくらいな穴が開いてます。
私たちは直感しました、こここそが美しい姫たちが住む、またドラゴンボールが眠る竜宮城への入り口だと。
さあ、いよいよです。私は身震いしました。ところが浩二はカチンと固まったままです。そして「何か予感しないか?」と。そう言われれば、私も悪い予感がします。
そんな時、大地がグラグラと。木々の合間から富士山を見ると仰天です。噴火したのです、三百年ぶりに。
「あ〜あ、これで竜宮の姫たちは永遠に未確認のままとなるか」
こう嘆く浩二に、「親からもらった命、粗末にするなってこと。予感は富士山の噴火だったようだが、なにか不吉を感じれば、行動を慎めってことだよ」と声を掛けました。
そして私たちは竜宮風穴からくるりと踵を返し、元来た道を急いだのでした。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊