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超短編小説  108物語集(継続中)

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 胡蝶は今をときめく流行作家、捜査にも力が入り、事件は一気に解決するとみられていた。しかし、すでに一週間、犯人像は掴めず難航している。そこへ応援要請を受けた百目鬼学が加わった。
 そしてまず着目したのが――太陽のせい。
 女流作家はいまわの際で何を訴えたかったのだろうか? 部下の芹凛こと芹川凛子刑事も同様に首を傾げる。

 その芹凛に、百目鬼はぶっきら棒に「意見は?」と。こんな訊き方をする時は答えが見付からず、脳が煮えたぎってる状態だと芹凛は知っている。ここは差し水で、「カミュの異邦人で、人を射殺した男の動機は太陽のせい。この横滑りで、自分が殺されるのは不条理なことと言いたかったのでは」と。

 百目鬼は知ってる、芹凛が文学少女だったことを。だからその感性を信じ、そのような解釈もあるかと思ったが、「あのオバサンはもっと物欲的だよ」と眉間に皺を寄せる。
 確かに、胡蝶乱舞は胡散臭い。芹凛の脳も、他の太陽のせいは何なの? と沸騰、そしてついに閃く。
「それ、キラキラネームよ」

 百目鬼は腕組みし、「なるほど、太陽は『ひかる』とかの当て字ってことか。もう一度身辺を洗い直そう」と。あとはぎゅっと拳を握り締めるのだった。