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超短編小説  108物語集(継続中)

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 それから5日が経過し、二人の必死の捜査により明らかになってきた。つまり胡蝶には文才があった。だがアイデアは乏しい。そのため背後に、推理ネタを売る通称ヒカル(太陽)という男がいた、と。
 さらに胡蝶のライバル作家・姫野(ひめの)にもヒカルはネタを売っていた。すなわち二人の女流作家はヒカルのネタを取り合っていたのだ。そしてこの買い取りの縺れで、胡蝶は葬り去られたと推察される。

 しかし、ここで難問が。
 胡蝶が殺害された日、姫野とヒカルは東京駅からこだま657号に乗り、京都へと向かっていた。犯行時には、安城駅に対し東京よりの浜松駅付近を快走するこだま内にいたのだ。
 西へのこだまに乗車する者が、果たして擦れ違う、東へと向かうこだまの乗客を殺めることは可能だろうか?
 それでもここはベテラン刑事の勘、百目鬼は姫野とヒカルが怪しいと睨んだ。しかし、二人のアリバイが崩せない。頭を抱えるしかなかった。

「ゆっくりとは言え、なぜ、わざわざ二人はこだまに乗ったの? やっぱり魂胆があったのよ」
 ここは女刑事の意地、芹凛が時刻表を持ってきた。二人は一心不乱にページを繰った。その結果、推理は確信へと変わって行ったのだ。
「まず、お嬢の思う所を聞かせてくれ」
 部下に花を持たせた百目鬼に、芹凛は目を輝かせ、とうとうと。

 姫野とヒカルは東京駅でこだま657号に乗り込むが、ヒカルだけ新横浜駅で後続ののぞみ229号に乗り移る。そして名古屋駅へと着き、胡蝶が乗車している、すなわち西からやって来たこだま662号に乗り換え、東へと折り返す。そして安城駅までの間、胡蝶を車両間に呼び出し、絞殺。

 その後、ヒカルは安城駅で降車した。そこへ東から入って来る元のこだま657号に再び乗車し、姫野が待つ席へと戻る。あとは何事もなかったように京都駅へと到着。
 こうして、ヒカルは姫野と共にずっとこだま657号に乗車していたというアリバイを偽装した。