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超短編小説  108物語集(継続中)

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 捜査一課の百目鬼学(どうめきがく)、こんな取り調べをマジックミラー越しに耳をそばだて、目を凝らしていた。そしていきなり「捜査線上から漏れてるヤツがいる!」と吠え、「おい、現場に行くぞ」と部下の芹凛(せりりん))こと芹川凛子(せりかわりんこ)刑事に声を掛けた。
 こうして犯行現場を改めて調べ直してみると、「この壁、襖一枚と同じじゃないか。隣人は聞きたくもない物音や声を聞かされてたってことか」と百目鬼が指摘する。

 だが芹凛はよく理解できず、ポカンとしていると、「芹凛はまだお子ちゃまかい。要は、男と女の営みだよ」と百目鬼からの成人教育。
 その後、眼光鋭く「隣の住人は誰なんだ?」と質問を。芹凛は事件資料を繰り直し、「北本悠斗(きたもとはると)というフリーターです。事件の一ヶ月前に引っ越して、あとはずっと空き部屋です」と報告する。
「北本、結構イラッときてたんだろうなあ」と漏らしてしまった百目鬼に、今度は芹凛が「それだけで殺しますか?」と反論。

 確かに! もっと深い恨みがあったのだろう。「とにかく、北本の身柄を確保しよう」と伝えると、芹凛はさっさと関係部署へと連絡を取るのだった。

 さらに一週間が経過した。徐々に北本のことが明らかになってきた。
 北本は入社試験を受けた。しかし、壁の向こうで繰り広げられた秘め事のせいで、試験前夜は一睡も出来ずに筆記試験に臨んだ。その上、青ざめたまま面接を受けた。結果は不採用。
 だが北本は意外なことを知った。隣人の女性はその会社のスタッフ、そして面接官は、アパートの通路ですれ違ったことのある隣人の情人だ。

 正社員になるために頑張ってきた北本、壁一枚隔てた向こう側で淫靡(いんび)な行為に溺れる部長と女性スタッフに、夢は無残にも破壊されてしまった。
 もう許せない。そして北本は決意したのだ、女には死を、男には破滅の裁きを、と。