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超短編小説  108物語集(継続中)

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 綾乃と男女関係になって三年、妻の美月は気付いてなかったと思います。しかし、あの日──妻の言によれば、綾乃という女から突然電話があり、「私はご主人の愛人。だけどもう限界、そろそろ妻の座を譲ってください。だから私のアパートで話し合いしましょ」と。
 それは綾乃になりすました電話だったかも知れませんが、それでも美月は出掛けて行きました。

 それにしても、少し変。玄関の鍵は掛かってなかったのです。妻の美月が恐る恐る部屋へと入って行くと、床はすでに血の海。胸を刺された綾乃が倒れていたのです。

 その頃です、「殺される!」と綾乃からのメールを私は受け取りました。心配で、急ぎ駆け付けると、美月が綾乃の亡骸の前で呆然と立っていました。
「お前がやったのか?」
 私が問い詰めますと、「すでに殺されてたわ。この現場に、私たちは意図的に呼び出されたのよ」と唇を噛み締めました。

 私はパニクってましたが、できるだけ冷静に考えてみました。
 現在昇進できるかどうかの瀬戸際。今のところ会社は私と綾乃がオフィスラブに陥ってることを知りません。そして現実に綾乃が亡くなってしまった以上、私はこの殺人事件とは無関係の立場を取るのが良いと考えました。こうして私は妻に、お互いに秘密だぞと念を押し、玄関の鍵を閉めました。
 その一週間後、管理人が異臭に気付き、部屋へ入って仏さんを発見したと聞いてます。

 こんな不届き千万な真実を語り終え、項垂(うなだ)れる山端に、「綾乃さんのケイタイと、凶器のナイフが庭から出てきたんだぞ、お前が隠したんだろ?」と取調官の容赦ない尋問が続く。