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超短編小説  108物語集(継続中)

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 随分と昔のことだ。昭和四十年頃まで、この辺りに龍神村と呼ばれる村落があった。しかし、世の中の進歩に連れて、山の人々は町へと移り住み、ついに廃村となった。

 しかし、まことに奇異なのだ。なぜこんな人住まぬ山奥に大きなプールが。しかもわざわざ清流の脇に?
 もちろん泳ぐなら川の方が気分爽快だ。それにも関わらず、なぜ?
 ひょっとすれば、村興しだったのかも?
 良樹はそんなことを思い巡らせながら、ここまで出掛けてきた。

 朽ち果てた村を通り過ぎ、雑草をかき分け、深い木々の合間をくぐり抜けやっと川へと下りてきた。さらにそこから1キロほど上流へと遡(さかのぼ)った。すると樹木が覆い被さってはいるが、少し開けた場所へと出た。
 そしてそれは――航空写真通りそこにあったのだ。澄んだ水を満々と湛えた青いプールが。

「これってスゴイなあ、川から水を上手く引いてるし、きっちりと縁取りがされ……、まるで遺跡だよ」
 良樹は感嘆しながらプールを覗き込んだ。だが底が見えない。深さは五メートル以上はあるだろうか、いやひょっとすれば底なしかも。少し恐い感じがする。

 それでも良樹は、「折角だし、ちょっとひと泳ぎしてみるか」と衝動にかられる。
 うーん、やっぱり我慢できず、背中のリュックを下ろし、近くにある木の椅子に放り投げた。

 しかし、……。