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超短編小説  108物語集(継続中)

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 それにしても、やっぱり継続は力なり。こんな思い付きでも、なんじゃらかんじゃらと試行錯誤を繰り返している内に、夢は脳の高次視覚連合野に存在していることがわかった。
 あとは様々な図形を見て、その血流変化をマグネティック・リソナンス(磁気共鳴)でパターン化させる。それからそれらを映像化するアルゴリズム(情報処理)を組み立て、あとは様々なパターンをどんどん増やすだけ。これにより映像は見違えるほど鮮明となった。

 そして、ついに完成! 夢録マシンが。
 こうなれば、凡人の性、一度試し撮りをしてみたい。

「榊原、最近よく眠れてるか?」
 オフィスの昼休み、スタッフはマッタリと一服中。そんな中、高見沢は部下でもある後輩に、それとはなしに声を掛けた。
「いやー、先輩。ちょっと最近、変な夢を見ましてね、本当の自分がわからないんですよ」
 これぞ思う壺。高見沢は強引に「昔、周という人が胡蝶の夢を見たの知ってるか?」と、本題へと無理矢理突入させる。だが、こんな無茶振りにどことなく危険を感じた榊原、それでもここは先輩からの問い掛けだ。お愛想で、「その胡蝶の夢って、何ですか?」と返し、ニコリと笑う。

 これに気をよくした高見沢、ここぞチャンスと講釈を一節、とうとうと。
「周の夢に胡蝶なるか、胡蝶の夢に周なるかを、知らず。すなわち周は蝶の夢を見るのだけど、自分が蝶になっているのか、蝶が自分なのか、わからなくなるんだよなあ。要は、夢の中の自分が本当の自分? それとも現実にある自分が本当? ってことだよ」
「先輩、それですよ、私の迷いは。一体どっちなんでしょうね」
 ついつい首を傾げる榊原に、高見沢は一歩踏み出し、さらに……。

「いいか、本当の自分を見極めるためには、夢の世界の自分を知る必要がある。だから榊原の夢を録画して、再生してやるから。さっ、この電光帽子を被れ。そしてこの睡眠薬入りジュースを飲め」
「これって、ちーとヤバそう」
 榊原はびびり、「先輩、これから午後の業務があるのですよ」と反論した。だが、「これは商品開発の一環だよ。だから安心しろ」と、見え見えの職権乱用。

 それでも行き掛かり上、「わかりました」と榊原が返事したものだから、後は会議室へと連れ込まれ、電光帽子を被っての、2時間の心地よい睡眠を取ることになる。