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超短編小説  108物語集(継続中)

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「びっくりだぜ、貴史。久し振りだな」
 洋介も驚きを隠せない表情。それでも余程懐かしかったのだろう、貴史の手を握ってきた。舞子も洋介のそばに来て、「貴史君、お元気そうね」と目を潤ませる。
 三人が共有した青春、貴史にはそこで彩られた様々なシーンがフラッシュバックする。

 それにしても不思議だ、なぜ、ここに……、洋介と舞子の二人が?
 そんな訝(いぶか)しがる心の奥底を洋介は読み取ったのか、「まあ貴史、そこへ座れよ」と奨め、まずはお冷やを出してくれた。貴史はそれをとりあえず無造作に口に含むと、洋介が「俺たち京都を飛び出した後、創作スイーツで身を起こそうと一所懸命やってきたんだよ。お陰でやっと店を持つことができてなあ」とポツリポツリと経緯を語り始めた。

 されども貴史は、――ということは、洋介と舞子は結婚してしまってるのか? と。
 妻を持つ身でありながら、どことなくムカつく。
 しかし、その感情を見透かされないように、コップの水を一気に飲み干した。
 そして、この素直になれない心情から解放されたくて、「なあ、洋介、お前憶えてるだろ。卒業前に抹茶アイス食べたろ。あの時、俺確かめたんだよな、舞ちゃんのことどう思うって。そしたら、お前、何とも思ってないよ、こうはっきり言ったんだぜ。それがなんで、今?」と直球で訊いてしまった。

「済まなかった、貴史。あの時、舞子には告白済みで……。親友のお前が恋心を抱いていたことは知ってたものだから、その遠慮もあり、ついてしまったんだよ、真っ赤な嘘を」
 貴史はそんなことを今さら攻めるつもりはない。あれは真っ赤な嘘だったのか、と大人として納得し、あとは「仕方ないか、で、創作スイーツを食べさせてくれよ」と照れ笑った。