超短編小説 108物語集(継続中)
こんな二人の様子を見ていた舞子は少しホッとしたのか、話題を変えて、「いつもこの人、お巫山戯さんなんやから、そやさかい、こんな〈 What's new ? 〉なんえ」と京言葉で語り掛け、濃い緑色で覆われた、抹茶スイーツを目の前に置いてくれた。
もう過去は過去と舞子への淡い恋心を吹っ切った貴史、現実に戻り、テーブルに目を落とすと……、美味しそうだ!
貴史は辛抱できず、スプーンで大きく取って口に運んだ。
うーん、確かに香り良い抹茶テースト。洋介、結構やるじゃないかと舌の上で転がすと、その瞬間ビックリ仰天、芯はハニー味だ!
「何なんだよ、これ、裏切られた味だよ」
この大きなリアクションに、舞子がうふふと笑いながらメニューの一つを指さした。それを目にした貴史、うっと上体を後方に引く。
なぜなら、そのスイーツ名は事もあろうか──〈 抹茶な嘘 〉。
高校卒業前に洋介が吐いた真っ赤な嘘は、今、〈 抹茶な嘘 〉に進化したのか!
こんな奇異さに妙に感心する貴史だったが、ここは一言批評せねばならない。
「洋介、お前のダジャレ、いやウィットもわかるが、もっと人に幸福が巡ってくるようなテーマでスイーツ作りをして欲しいなあ」
青春を共に過ごした友人として、忌憚なく言ってしまった。すると横から舞子が「そうでしょ、貴史君、これ、この人のスイーツよ、見てくれはる」とメニューを開いた。そして、そこには……。
スイーツ・カフェ[What's new ?]のメニュー
アッパレパイ
おかしなお菓子
お猪口レート
ケーキは気から
ココ夏秋冬(ココナツアキフユ)
爺(ジジ)ロア
朱(しゅ)クリーム
滑る斜ベット
地図ケーキ
いけないプ倫
抹茶な嘘
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊