超短編小説 108物語集(継続中)
しかし、難しいものですね、未確認生物を発見するって。もう諦めようかなと思い始めた頃のことです。携帯が掛かってきたのです、浩二から。
「直樹、ついに発見したぞ、パンダ猫を!」
浩二の声が震えていました。私もそれで心臓が止まりそうになったのですが、気を落ち着かせて、「どこに?」と尋ねました。すると浩二が信じられないことを口にしたのです。
「お前のアパートの近くの公園だよ。月夜に、パンダ体型、いや福々しいお姉さんが、そいつを鎖で繋いで現れるとか」
これはきっと眉唾ものだ。私はそう直感し、「黒猫に白ペンキ塗ってるだけだろ」と返すと、「お前バカか、偽物は普通白猫に黒ペンキだよ。その方がペンキ代が安くつくんだよ」と、浩二はまるで経験者語るでした。
「だけどなあ、今回は本物だよ」と浩二は自信たっぷり。これに押し切られて、「今夜確認するよ」と私はケイタイを切りました。
真夜中のことです、私は公園へと出掛けました。中天には弓張り月があり、青白い光を発しています。
そんな仄かな月明かりの下、公園の奥へと歩き進むと、一人の女性が……。
確かに福々しいそうだと見て取りながら、さらに近付いて行くと、女性はベンチに座り、芝生の上で、体長は60センチ程度の小動物を遊ばせているではありませんか。
どうもそれは犬でも猫でもないような……、まるでラッコのように上を向いて転がり、遊んでます。さらに目を懲らすと、目の周りに黒い縁取りがありました。
私は、これぞパンダ猫ではないかと、女性に確かめました。
「可愛いですね。何という動物ですか?」
女性は私をじっと見詰めてきて、しっかりと答えてくれました。
「ああ、この子ね、──パンニャよ」
「はっ? パンニャ?」
私は開いた口が塞がりません。そんな私を見て、「この子、ニャオーじゃなくって、パンダを気遣ってのことなのでしょうね、パンニャ、パンニャって鳴くのよ。3ヶ月前に山で拾ってきたの」と説明してくれました。私は山と聞いて、明らかにこいつはパンダ猫だと確信しました。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊