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超短編小説  108物語集(継続中)

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 こんな自由奔放な美月と暮らし、早十年。振り返れば、奇妙な縁だった。
 そう、あれは同僚の送別会の帰りのこと。酔いもまわりフラフラしながらいつもの通勤バスに乗った。いや、そのつもりだった。
 その内バスの揺れで心地よくなり、ぐっすりと寝込んでしまった。気が付けば、終点。
 降車すると、そこは奥深い山の中。木々の合間から町の灯が遠くに見え、ホーホーとフクロウの鳴き声が聞こえてくる。

「ここは、一体どこですか?」と運転手に訊くと、「あんた、ここ初めてか? ということは……、人間?」、こんなちんぷんかんぷんな返事に、大輝はポカーン。
 さらに、運転手は「ここは八百万の神々が住む村だよ。今夜はもう帰れないから、ついてきな」と話し、さっさと歩き出した。
 ここで一人にされれば狼の餌食になりそう。大輝は無我夢中で後を追った。

 しばらく進むと、水面に蒼い月が映る泉が現れ、そのほとりに大きな屋敷があった。
「この男が、恐れ多くも、神の村に紛れ込んできました」
 運転手がほっぺの膨らんだ村長さんに紹介してくれた。
「お兄さん、わしぁ福の神じゃ。まあ、あがりんしゃい」と、ニコッと笑ってくれた。これこそ地獄に仏、いや地獄に神だけど、やっと生きた心地がした。

 それからのことだった、意外な展開になったのは。
 迷い込んできた人間が珍しかったのだろう、福の神からじきじきの飲めや歌えのお持てなし、大輝にとっては二次会となった。そんな宴もたけなわどき、一人のお嬢さんが現れた。だが大輝は彼女と目を合わせ、思わず盃をポトリと落としてしまった。

「なんで、こんな山奥に……、美月が?」
 目を白黒させる大輝に、レディーは澄まして言う。「ここが私の故郷よ。週末には戻ってくるの」と。