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超短編小説  108物語集(継続中)

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 そんな夢幻の夜が白々と明け、目覚めにと颯太は庭へ出た。そしてキラキラとした朝の輝きの中に光彩放つ蜘蛛を見つけた。黒と黄の縞模様、まさに威厳があり美しい。その奇抜さに見入っていると、背後から夏魔が声をかけてくる。

 その蜘蛛ね、コガネクモっていうのよ。
 メスは大きくって、性格は貪欲で……、獰猛なの。
 巣の中心で、頭を下向け、X字状に二本ずつ足をそろえてるでしょ。
 昆虫が網にかかると、その長い足をバネにして、獲物に瞬時に飛びかかり、大きな牙で噛みつくわ。
 あとは糸で巻き付けて、毒でドロドロに溶けるのを待つの。それからよ、チューチューと吸い尽くすのよ。

「へぇー、そうなんだ」
 颯太は夏魔の説明に感心するしかなかった。
 それにしても夏魔は息もつかず一気に喋った。こちらの方が予想外で、驚きだった。
 夏魔は寡黙な女性のはず。それがなぜ突然に、こんなにも饒舌に、そして熱く、しかも普段の生活にはあまり関係のない蜘蛛のことを?
 颯太は不思議で、あごに手を当てる。その颯太の背中に、今度はトーンの落ちた夏魔の囁きが覆い被さってくる。
「そのご婦人、私と一緒で……、無口なのよ」

 えっ、蜘蛛が無口? そりゃそうだよなあ。
 だけど、一緒って? 夏魔はやっぱり怪異な世界に生きる女なのか?
 ひょっとすれば、このメス蜘蛛と――親戚?

 こんなことを思い巡らす颯太、身体がカチンと固まってしまった。