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超短編小説  108物語集(継続中)

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 その夜、魔美は先輩スタッフの花木洋介から食事に誘われる。
「なあ、夕べ係長と一緒だったんだろ? 何があったんだよ?」と魔美を心配してくれている。入社してから知り合った花木だが、ハラスメントから守ってきてくれた。そんな花木に魔美は信頼をおき、話す言葉に嘘がない。

「取材で途中まで一緒だっただけ。だけど係長は知らなかったのよね」
 花木が首を傾げ「何を?」と問い返すと、「普通の人間が百鬼夜行に遭遇した時、カタシハヤ、エカセニクリニってね、呪文を唱えないと、妖怪にもて遊ばれて、あの世行きになるのよ」と魔美は話す。

 花木は魔美のお喋りが現実離れしていて、可愛く、胸ズッキューン。そんな花木を魔美はいたずらっぽく見つめ、鈴を振るような声で。
「だから、花木さん……、して上げようか?」
 こんな会話の展開に、花木は摘まんでいた真っ赤なマグロをポトリと落としてしまう。あとは口をポカンと開けたままに。

「バカ、勘違いしないで、Hじゃないわよ。花木さんにも嫌なヤツがいるでしょ。言ってみて、私が――コ・ロ・シ・テ・ア・ゲ・ル」
 二人の間に重い沈黙が。だが花木は最後にボソボソと答えてしまう。「ああ、山田課長だよ」と。

 次の百鬼夜行は七月の戌日に催された。そして係長と同様、山田課長は大通りで行き倒れとなり、お陀仏に。
 さらにだ、事はこれだけでは終わらなかった。花木にとって鬱陶しいヤツはほとんど黄泉の国へと。お陰で上のポストはガラ空きに。これで出世が早くなった。

 こんなおどろおどろしい出来事を、魔美と共有してしまった花木、その関係は抜き差しならぬものとなる。とどのつまりが婚約へと。