超短編小説 108物語集(継続中)
ある日、魔美が花木に求める、一度母に会って欲しいと。
白いビルと黒いビルの隙間を通って訪ねてみると、魔美の母は菩薩のように美しい。そして魔美の母が花木に穏やかに話し掛ける。
「世間では、私たちのことを恐ろしい夜叉で、男心を惑わせ、命まで奪ってしまう縁障女(えんしょうじょ)と呼ばれているのよ。だけど心配しないで、生涯愛してくれる夫の命は奪わないから。だから私、早く縁障女の血を引く――孫娘がみたいわ」
これで魔美は妖怪だった、そう確信した花木に、魔美が耳元で囁くのだった。
「新人の私、あなたをゲットできたわ。だから優しくしてね。でなければ……、コ・ロ・シ・テ・ア・ゲ・ル」
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊