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超短編小説  108物語集(継続中)

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「ねえ、拓馬、風と共に去りぬ、スカーレット・オハラ観た?」
 授業の合間にそんなことを訊いてきた。拓馬は部活で忙しい。「それって映画のこと、そんなの知らないよ」と軽く返した。それに優奈はムッとして、「私も、自分の気持ちに正直に生きてみたいわ」とボソボソと呟いた。
 それがあまりにも正直っぽい言い草だったためか、拓馬は先生の目を盗んで食べていた早弁の蓋を落としてしまった。

 カンカラカン。静まった教室に響き渡る。
 先生はこんな出来事も飲み込んでの授業なのだろう、特に驚く風もなく、授業を淡々と続けて行く。
 横を見ると、優奈が下を向いて、ぷぷぷとあどけなく笑いを堪えてる。その後、それは唐突だった。「ところで拓馬は、何の花が好きなの?」と訊いてきた。

 優奈は一体何を考えて学校に来てるのだろうか? 拓馬は疑問だったが、とりあえず季節がらで、「紫陽花かな」と一言答えた。
 その翌朝のことだった。教壇に青い紫陽花が飾られてあった。拓馬が「あれ、優奈が」と目配せすると、優奈は「うん」と小さく頷いた。
 その表情が、おてんば娘の割に純で、天使のよう。いや、どちらかというと小悪魔のようだった。

 そして当然の成り行きだろう、これで拓馬はイチコロに。優奈を好きになってしまったのだ。