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超短編小説  108物語集(継続中)

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 ジジジーーーー。

 大樹は「ウッセーなあ」と唸り、枕元で鳴る目覚まし時計を止めた。そして目をこすりながら「えっ、これって夢だったのか?」と、まずは一安心。
 しかし、この夢って正夢、充分あり得るストーリーだ。大樹は早速節子にケイタイを掛ける。
「なあ、節子、今日浅草へ行くだろ。現地集合じゃなくって、駅前で待ち合わせしないか」
「いいわよ、だけどどうしたのよ」

「頼みがあるんだよ、右から2つ目の改札を、一緒に通って欲しいんだよ」
 こんな大樹の求めに「大樹は住む世界を確定したいんだね」と、節子から思わぬ言葉が返ってきた。まるで大樹が見た夢を知ってるかのようだ。

 大樹の脳はこれで余計にこんがらがったが、もし節子が左端の改札を通れば明朝体ワールドへ入ってしまう。そして明朝体ワールドがお気に入りなんて嘯(うそぶ)く節子を取り戻すのは、またまた大変だ、と心は兎に角せくばかりだった。