超短編小説 108物語集(継続中)
月日は流れ、半年後の大安吉日、智也と愛莉の結婚式はつつがなく終わった。そして二人は披露宴のために興行中のサーカス会場へと移動した。要は特別出演させてもらうことになっている。
「お待たせしました。新郎新婦のご入場です」
司会者・マキコの発声で幕は切って落とされた。ファンファーレが鳴り響き、智也と愛莉は派手なサーカス・コスチュームで登場。割れんばかりの拍手があり、二人を祝福する。
「ただ今より、空中ブランコをご披露して頂きます」
いよいよスタートだ。智也と愛莉は武者震いする。
二人は梯子を登り、向かい合ったブランコに座る。そして同時に踏み台を蹴り、身を空中へと放つ。それから三回大きく振り子のようにブランコを漕ぐ。四回目は智也が逆さとなり、空中へと舞い上がった愛莉を受け取る基本技だ。
何回も練習を積んできたので自信はある。だがやっぱりガチガチ。
「智也、しっかり受け止めてよ!」
「ああ、愛莉、俺を信じて、飛んでおいで!」
二人にはワイヤレス・ヘッドマイクが装着されている。こんな熱い会話が見守る人たちにまる聞こえなのだ。
そして二人は基本通りに実行。最も近づいた時に、愛莉がふわりと飛翔した。
それを……、バチン!
お見事! 智也は愛莉の手首をしっかり掴んだ。
これに会場は拍手喝采。まさに素晴らしい二人の門出となった。
そして、その後の綱渡りもなんとかこなした。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊