超短編小説 108物語集(継続中)
「どうしたいの?」
愛莉の手に力を込め、智也は訊いた。しかし、ブライダル・プランナーが自信たっぷりにまくし立てる。
「最近、スマ婚や楽婚が流行ってますが、当社が開発しましたサーカス婚、これがお二人の門出としてお値打ちですよ」
智也は横槍にムッとしたが、ここは冷静に。
「マキコさんでしたよね。それって何がお値打ちなんですか?」
こう確認すると、マキコ姉さんは背筋を伸ばし、ニッと笑った。
「もちろんサーカス婚ですから、新郎新婦さまにはパフォーマンスをしてもらいます。空中ブランコに綱渡り、それにナイフ投げ、最後はピエロになってもらいますわ。これで招待客のみなさまも、一般のお客さまも盛り上がり、お二人にとって、きっと思い出の晴れ舞台になるでしょう」
サーカス婚は新郎新婦の参加型、確かに面白そう。だが智也は曲芸に自信がない。そんな迷いの隙に、「やっぱりサーカス婚しかないわ。それでお願いします」と愛莉が返事をしてしまった。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊