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超短編小説  108物語集(継続中)

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 あっという間に時は流れ、マレーシアでの出張業務は無事終わった。そして高見沢は帰路についた。
 もちろんドリアン二個を、匂いが漏れないようにシートでくるみ、ダンボール箱に詰め込んでだ。
 しかし、微かに漏れてくる。そのため機内持ち込みは禁止。
 マレーシア出国時、やたらと検査されたが、「これ持ち帰らないと、ボーナスがもらえません」と泣き付いて、なんとか日本へ無事ランディング。そして入国手続きを終え、ダンボール箱を抱えて税関へと進んだ。
「これ、何ですか?」
 さすが係官、勘が働く。「植物です」と素直に答えると、「植物検疫へ行ってください」と指示が飛ぶ。

 南国からの持ち込みは果物や花が多い。そのため検疫部署は長蛇の列。そこへ並んだ高見沢、やっと順番が回ってきた。
 高見沢はおもむろにデスクにダンボール箱を差し出した。検疫官は「開けます」とすかさず手際よくカッタ−で包装を切っていく。高見沢はその手早さに感心しながら見ていた。

 そんな時だった、突然の出来事が。検疫官の目が黒から白に変わったのだ。あとは「うっうっ!」と絶句。高見沢も思わず「うわっ!」と叫んだ。
 さらに後方の人たちは、驚きの声「わっ!」と発し、その後「わっ!」、「わっ!」、「わっ!」と波紋のように伝搬していった。最終的には、三、四〇人の人たちから「うわ−!」というドヨメキが起こり、一斉に後ずさりをしたのだった。

 原因は明らかにドリアン。それも密封され続けてきたメッチャ濃度の濃い匂い。検疫官が卒倒しかけている。
 されど高見沢は張本人、一旦「ゴメン」と小さくなったが、あとは「スゴイ威力!」と感動しっ放し。そして、それはそれは危険な思考を巡らせてしまうのだ。

「ひょっとすると、ドリアンの匂いで人を殺せるかもなあ。ならばこれで、花木部長とマキコを、いっそのこと……」と。