超短編小説 108物語集(継続中)
しかし、結果はだいたいたい意図に反するもの。
「高見沢、このドリアン、うまいよ」
「おいしいわ、高見沢君。出世街道ばく進してよ、一応応援するからね」
花木部長もマキコもドリアンにしゃぶりついて、まことに上機嫌。
それは粉雪が吹き付ける極寒の夕暮れのことだった。一面真っ白な公園にドリアンを持ち込んで、誰しも未体験な、雪のドリアン・パーティ。凍える北風が、悪魔の匂いをどこかへと運び去ってくれる。
ドリアンの匂いで二人を卒倒させてやろう、あわよくばお陀仏になれと企んでいた高見沢、不運にもそれは果たせなかった。しかし、今は幸せ気分で一杯だ。
男二人と女一人、六花(りっか)白銀の公園で南国の果物ドリアンにむしゃぶりついている。こんな珍奇で幻想的な、決して忘れることができない光景がそこにあったのだ。そして高見沢はしみじみと呟いた。
「ホント、ドリアン殺人事件にならなくて……、ホッ!」
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊