超短編小説 108物語集(継続中)
高見沢はこの男の解説で思い出した。そう言えば、宇宙マガジンに載っていた。獅子座に太陽に似た恒星があると。そしてその惑星の一つが地球と瓜二つ。いわゆるミラー星だ。
そこには地球と同じ町があり、もう一人の自分が存在している。
こんなことを知った高見沢、一度C星の自分に会いに行ってみたいと願うようになった。しかし、過ぎ行く時間の中で、少年はそんな夢を忘れ去ってしまった。
「さあ、地球の一郎、出掛けるぞ」
「えっ、どこへ?」
高見沢は目をこすりながら訊く。
「決まってんじゃん、今からおまえの夢を叶えてやるから。俺の後を付いて来い」
男は有無を言わさず、急かせてくる。だが、考えてみれば、これは千載一遇のチャンスだ。「ヨッシャー! 頼むぞ、C星の一郎さん」と返した。
このようにして、C星一郎さんの後をトコトコと付いていく。すると神社の雑木林にゴロンと転がっていたのだ。長さ10メートルほどの時空トンネルなるものが。
高見沢はC星一郎さんの後を追って潜り込む。すると想像だにしていなかった、星々が煌めく空間をペガサスに跨(また)がって、悠々と飛翔して行く嬉しい羽目に。
その時間は30分程度のことだった。そして天馬から下りトンネルから抜け出すと、ここがC星だとのこと。しかし、そこはやっぱり神社の雑木林の中、地球とまったく変わらない。
そこから導かれ、赤いトンガリ帽子の洋風の館(やかた)へと案内された。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊