超短編小説 108物語集(継続中)
中学生の直樹と祐子は同じ高校を目指し頑張っていた。そして祐子はいつも「これで元気付けようね」とシュークリームを二つ持ってきてくれた。二人仲良くそれを囓りながら受験勉強に励んだ。
だが受験の朝、祐子は来なかった。結果、直樹は合格、祐子は不合格となった。入試日の朝、祐子は受験勉強の疲れで倒れてしまったのだ。
後日、直樹はシュークリームを持って祐子を見舞った。祐子はよほど悔しかったのだろう、泣いていた。そして八つ当たりだった。シュークリームを直樹に投げ付けてきたのだ。それが直樹の顔に当たり、クリームが頬をつたった。
直樹はまだ少年の域を超えていなかった。祐子の苦しさを包み込む包容力はなかった。投げ付けられたシュークリームをそのまま祐子に投げ返してしまったのだ。
それ以来二人の間に深い溝ができ、もう会うこともなく時は流れて行った。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊