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超短編小説  108物語集(継続中)

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 直樹はしばらく散策し、商店街へとやってきた。昔は賑やかだった。だが今はシャッター通り化している。それでも目当てとしてきたケーキ屋はかろうじて店を開いていた。直樹は懐かしく、そして嬉しかった。勢いよくドアーを押し込み、ケーキウィンドウへと進む。

 直樹がもう一度食べてみたいと思っていたシュークリーム、焦げ目が付いた黄金色で並んでいた。ふんわりとした殻の中には、ひんやりとしたクリームが隠されていることに間違いないだろう。
「このシュークリーム、二つください」
 直樹は女性店員に注文した。すると女性店員からは意外な言葉が返ってくる。

「直樹さん、直樹だよね」
 こんな突然の呼び掛けに驚き、直樹は顔を上げる。同時に「あっ」と言葉を詰まらせ、身体が固まってしまう。

 そう、目の前にいたのだ、祐子が。

 祐子は直樹の初恋の人。いや、少年、少女でありながら、二人は将来を誓い合っていた。この町を離れてからも、ずっと心の奥底に祐子がいた。そして正直、今も好きだ。

 なぜあの時、あんな風になってしまったのだろうか、とずっと悔やんできた。