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超短編小説  108物語集(継続中)

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 あれはまだ若かった頃のことだった。社内クリスマス・パーティーの後、真奈がやぶから棒に訊いてきた。
「涼太さん、私をもっと好きになって、結婚する? それとも会社を取って、出世したい? どちらを選びたいの?」
 涼太は真奈が好きだった。もし結婚できたら、生涯面白いことになるだろうなあとぼんやり考えていた。

 しかしアルコールの勢いで、男の見栄を張ってしまった。
「もちろん、偉くなりたいよ」
 これを耳にした真奈は意外にあっさりしたものだった。
「そう、わかったわ。ところで涼太さん、最近上司からのパワハラで困ってるでしょ。私がなんとかしてあげるわ。だけど、この人生の貸しは出世払いでいいから、死ぬまで返し続けてね」

 涼太はかなり酔っ払っていた。
「ああ、あいつを葬ってくれたら、真奈さんの生涯を保証するよ。男の約束だよ」
 涼太はこんな危険なことを言い放ってしまったのだ。

 それから1年後、上司は真奈とのオフィスラブ発覚で飛ばされた。その後、真奈はセクハラだったと言い張り生き延び、上司は行方不明となった。涼太は目の上のタンコブが取れ、そこから昇進の快進撃が始まった。
 しかし真奈は上司の子を産み、シングルマザーとなった。

 涼太は思った。人生とは、実に不徳な展開をして行くものだと。
 しかし涼太はもう戻れなかった。なぜなら、その時涼太は妻を娶ってしまっていたからだ。
 その後、もちろん家族のために、そして真奈との約束を果たすために頑張るしかなかった。馬車馬のように働いた。
 そして今宵、久々にお局さま、真奈を食事に誘い、少し酔っ払った。