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超短編小説  108物語集(継続中)

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 いつもの強気の真奈らしくない。
「真奈さん、そう言うなよ。俺がここまでこれたのも、真奈さんが今までサポートしてくれたからだよ」
 これは断じて嘘ではない。だが真奈は何かを企んでいるのか、媚びるような目つきでじっと見つめてくる。
「だったら、今夜……、私を抱いて」
 ひょっとすればこれは真奈の罠かも、涼太は疑った。だが調子に乗って、「えっ、いいの」と返してしまう。
 それを確認し、真奈はゆるりとワインを一口。余程絶妙な味わいだったのだろう、柔らかく微笑む。それから涼太を睨み付け、一言。
「冗談だってば」 

「おいおい、男をからかうのはよせよ」
 涼太はムカッときた。しかし真奈はふふふと笑い、さらに意味深なことを。
「だって涼太さんは、あの時私を選んでくれなかったでしょ。だけど、これからも涼太さんを応援するわ。だからクリスマス・プレゼントに、蟻10匹分くらいのお砂糖がもらえたら、私、それだけで嬉しいの」
「お砂糖ね」
 涼太は真奈が何を言いたいのかおよその見当が付いてきた。

「確かに出世払いの約束だったよな。じゃあ、お砂糖、毎月3万円くらいでいいかな?」
 黒毛和牛フィレステーキにナイフを入れる真奈、微妙に頬が緩む。
「お気持ちだけで、充分よ。私はちっちゃな蟻、だけど、チクリと刺す刺客。涼太さんのために蟻10匹分くらいの働きはしてきたよね」
「わかってるよ、恩義は決して忘れてないから」