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超短編小説  108物語集(継続中)

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 涼太は真奈の妖しい色気に翻弄され、堪らず口を滑らせてしまう。
「俺たち、もう一度、やり直すことできるかな?」
 真奈は香りの良いコーヒーに1粒のシュガーを入れ、ぐるぐるとかき混ぜる。
「あなたバカね、一度結び損ねた赤い糸は二度と結べないのよ。今のすべてを捨てる覚悟なんてないくせに」

 そう毒づいて、「私は仕事に一途な男の末路を見てみたいだけなの。どんな花を咲かせて散っていくのかなって。だから浮ついたことを私に言わないで」と、あとは涙がポロポロ零れ落ちる。
 こんな事態に、涼太は無言で真っ白なナプキンを真奈に渡す。
 それを受け取った真奈はテーブルに大きく広げ、角砂糖1個を中央に置く。そしてその周りに文字を書き連ねるのだった。

 蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻

 涼太は1匹2匹と数えてみる。そして10匹を確認した。
 その瞬間だった、涼太に電撃が走った。
 それは嫌みか、それとも真奈の本心か、とにかく蟻が10匹……、『ありがとう』だ。

 そして涼太はしみじみと呟いてしまう。
「真ん中の角砂糖は俺。いつの間にか、砂糖であらねばならない生き様になってしまったが……、まっえっか」と。