超短編小説 108物語集(継続中)
そう、あれは30歳前の頃のことだった。
得意先の総務課に現代風な相沢厚子(あいざわあつこ)がいた。
応対はいつもてきぱきとし、なかなかのやり手だと思われた。営業の若いサラリーマン、洋介にとって憧れのオフィスレディーだった。
そんな洋介の思いを汲み取っていたのだろうか、なぜか厚子は、幹部との面会時間などを優先的に割り当ててくれた。
そしてある日、洋介はお礼にと、思い切って厚子を夕食に誘った。厚子は「ご一緒させてもらうわ」と大人っぽく微笑んだ。
仕事上で顔を合わし、事務的に会話を交わすだけの間柄だった。だが、それが3年も続くと互いに気心は知れてくるものだ。初ディナーだったが、まるで恋人同士のように盛り上がった。
そしてこの流れは止まらなかった。洋介は厚子のアパートへと誘われ、結果、若い男と女の成り行きとなり、洋介は厚子を抱いてしまったのだ。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊