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日常の非日常

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鯖、読みすぎ



 美容院へ行ってきました。
 病院ではないのです。びよういん。「よ」が、大きいか小さいかだけで、全然違う意味になる日本語の不思議。
 すると、今だかつてない閑古鳥が!!
 もう、ほとんど貸しきり状態。
「『どうしたんですか? 何かあったんですか?』と、問いたいぐらい、お客さんいませんね?」
 ワタクシもずけずけと聞きました。
 当然、お客さんの動向について、お店の方が何かを知っているわけでもなく。
「こういうことは珍しいんですけどねぇ・・・・・・」
 と、苦笑い。
 スーパーの売り出しでもなく、新規開店も、新装開店も、パーラー大目玉もないんですけどねぇ。駐車場もそこそこ埋まってますしねぇ。

 さて。そんなこんなで、待ち時間0で、シャンプー台へ案内され、のび~っと伸びる。

 美容院嫌いの一因でもあるのだけど、とにかく、ワタクシ、耳が遠いのです。
 老化ではありません。
 雑音の中から、人の声を選択的に聞き取るのが苦手なのです。
 聴覚検査では、聞こえない音までも聞こえるくらいです。つまり、耳そのものが可笑しいとも言いますが。いえ。そんな、笑い転げるようなおかしさでは・・・・・・orz....

 とにかく、美容師のお兄さんお姉さんは、すごいと思うのです。
 カツカツカツ!! っと鋏を鳴らしながら、しゃべりかけ、ごーっとドライヤーをかけても動じずに話し続ける。
 わし、何も聞き取れませんがな。
 シャンプーも同じく。
「・・・・・・ですか~?」(多分、湯の温度を聞いてきたのだと思う)
 え? なんですか?
「・・・・・・すか~?」(多分、かゆいところを聞いてきたのだと思う)
 ん? なんすか?
「・・・・・・か?」(多分、洗い残しを聞いてきたのだと思う)
 蚊!?
 いや、もう、なんでもいいから、聞かないでそのままやって。と、言いたいです。いいたいですが、相手もお仕事なんです。それが。
 ちゃんと聞かないと、後で、「湯ぅ! あつぅて、火傷しおったやんけ!! どないしてくれんじゃ!?」と、いちゃもんを付けられた時に、愛想の笑顔を振りまきながら、「いいって仰ったじゃありませんか」と、切り返せるようにいつでも理論武装しておかなければならないんです。
 仕方がありません。
「はい。大丈夫です」
 何が大丈夫のなのか、自分でも分からないが、一応、そう答えることにしています。
 便利ですね。「大丈夫」って言葉は。

 今日は、ほかにお客さんもお見えにならなかったので、少し声が大きくても恥ずかしくないので、まあ、聞き取れました。
 店長が、こんなお話をしてくれました。
 職人の師匠は、こんな汚い。って、話から。

 業界紙が回ってくる。そこに、カリスマ美容師と呼ばれる人の談話が乗っていた。曰く。
「一日、50人のお客さんを捌いているらしい。一ヶ月1200人。ありえねー」
 何でも、お忙しい時でも20人が限界。それも、もう、へとへとになって、家にも帰りつけないぐらいボロ雑巾のようにぐったり疲れるらしい。そんなの一ヶ月(25日)続けてられない。
 すでに、言ってることおかしいし。
 そもそも、一日、50人のお客さんが来ること自体、その店はどんだけ繁盛してるんですか? って話。

 立地も違います。相手は首都圏のセレブ相手の美容院ですから、それくらいのお客さんはいらっしゃるのかもしれません。

 それにしても。

 お弟子さんが、シャキシャキシャキっとカットして、
「先生! お願いします」
「うむ」
 徐に、一房、掴み。見事な鋏捌きで、シャキシャキシャキ!!!
「これでいいでしょう」
「ありがとうございます」
「はい、イチマンエン」

 とかいうんだよー。
 マネジメント料なんだろうけど、それで、一日50人だったら、ちょろいもんだ。
 そんなんだったら、俺だってできるぜ。
 
 と、胸を張る店長、カッコイイでし。

 それにしたって、 あっちの支店、こっちの支店と回ったとしても、移動時間とか、講演とかもあるから、一月半分ぐらいしか店には出れないだろう。
 1200人って、鯖読みすぎでしょ? by 店長

作品名:日常の非日常 作家名:紅絹