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日常の非日常

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母の日のカーネーションについての一考察



 これは、あくまで、母の日のカーネーションについての一考察である。他意はないことを、はじめにお断りしておこう。

 少し前に、一生に見る桜について、ラジオだったか新聞だったかで話題になっていた。
 曰く、
「世に桜は多かれど、同じ桜を見る回数は、限られている。庭の桜を生まれてから毎年見たとしても、平均寿命84歳だったとして84回。しかも、生まれたては記憶にないわけだから、物心ついた頃からだと、70回ほどになるだろうか」
 その方は、そろそろいいお年だったようで、あと同じ桜は20回見られたらいいほうだ。だから、大切に見たい。と、締めくくっていた。

 ええ話や。
 
 ふと見る庭の八重桜も、数日前の強風にてすっかり葉桜になっている。この姿も、平均寿命まで、あと40回ほどだろうか。
 そう思うと、なんだか惜しくなった。

 手元のチラシには、母の日のカーネーション特集をしていた。しかも、鉢植えである。
 そんなこと、思わなくてもいいのに、ふと、その話にカーネーションを当てはめてしまった。少し捻じ曲げて。

 思えば、母の日を意識し始めるのは小学生からだ。
 例えば、単純計算で、母が二十歳で子供を産み、子供が15歳でお小遣いを溜めて母にカーネーションの鉢植えをプレゼントしよう。
 母は、35歳。平均年齢85歳として、あと50歳。
 それから、毎年、子供はカーネーションの鉢植えをプレゼントした。
 母は、ガーデニング大好きで、カーネーションを枯らすことなく上手に育てた。
 そして、85歳。50鉢のカーネーションに囲まれることになるのだ。
 その間、植物を育てることが上手な母は、株分けもしただろうし、近所におすそ分けもしただろう。

 それにしても50鉢のカーネーション。どうしろって。

 うちの母は、植物好きなのはいいのだけれど、カーネーションだけはうまく育てられなくて、矢祭産の紫がかったものや、オレンジのものなど、花が咲く前に枯れてしまったものなどいろいろと武勇伝はある。
 武勇というのかどうかはともかく。

 まあ、でも、50鉢のカーネーションがあっても世話も仕切れないから、それはそれなんだろうなぁ。と、どこか遠くで思いつつ、ほんとに、植物の世話の上手な人って、どうしてるんだろうと、疑問に思ったのでした。

 そんなしなくていい心配までしだすと、プレゼントって変に考え込んじゃって、うまくいかないものです。
 
 今年は、母の好きだという、梅鉢草をお取り寄せしましたが、連休を挟んじゃったので、間に合いません。
 まあ、いっか。

 おかあさん。
 いつも、ありがとう。

2015.5.9 明日はママの日。
 

作品名:日常の非日常 作家名:紅絹