神話
神話2
1
昔、ひとりの修行僧がいた。彼は、心が完全に澄み、あらゆる悩みや欲望が彼を通過していき、何物にも動かされない境地を目指した。物事に動かされないようにと、彼はどんどん重くなっていった。瞑想や思索によって、彼の心はどんどん固まっていき、表面は非常に硬くなった。悩みや欲望を透過させるため、彼はどんどん透明になっていった。ただし、彼の達した境地は、人間としてはありえないものであり、その意味で不安定で壊れやすい境地ではあった。こうして彼はひとつの重くて透明で硬くて割れやすい彫像になった。こうしてガラスが生まれた。
2
昔、文字たちが人間に酷使されることに耐えられず、こっそり逃げ出したことがあった。文字たちは宇宙の外側まで行き、そこに住居を建て、きれいに整列させて団地を作った。だが、やがて宇宙が膨張していき、団地は宇宙の中に取り込まれ、最後には人間に見つかってしまった。人間はその団地の文字の配列を覚え、コンピューターにつなぎ文字の入力のために使った。こうしてコンピューターのキーボードが生まれた。
3
昔、二柱の神が地球の空を作っていた。空は地球をすっぽり囲む球面であった。そして、空の外側には、光に満ちた神々の世界があった。神々は空を、昼は青く、夜は黒くなるように彩色した。これは地球を作った神の一柱が青の神であり、もう一柱が黒の神であったからだ。神々はそれぞれの色ごとに一柱ずつ存在していた。青の神は光を集めて太陽を作り、青い空に貼り付けた。一方で、黒の神は、手元を狂わせて黒い空に穴を開けてしまった。そして、その修復の仕方が分からなかった。そういうわけで、夜空には穴が開き、夜空の外側から神々の世界の光が地球に向かって入り込むようになった。この穴が月である。
4
昔、とても器用な男が無人島に漂流した。男は、日を数えるために、棒を手ごろな長さに切り、一日ごとに傷をつけていった。棒が傷でいっぱいになると、次の棒に傷をつけていった。やがて男は死んだが、あるとき無人島に上陸した船乗りが、男の棒を見つけた。驚くべきことに、男が作った棒はすべて同じ長さであり、また傷の間隔も全く等しかった。船乗りはそのいくつかの棒を持ち帰り、物の長さを測るために使った。こうして定規が生まれた。