The Evangelion -missing link-
彼女にとって雨は好きなものではなかった。
傘をさして歩き回るのはうざったく、服が濡れるし、汚れやすいから外に出る気にもならない。
何より彼女にとって嫌な事を思い出させるものだったから。
窓に手をつき、下の様子を伺う。
道路脇は既に小川のように水が流れ、冠水の兆しを見せていた。
一瞬、何やら町全体がウォータースライダーになってしまったように思える。
そう考えると、少しだけ気分が晴れて思わずくすりと笑いが零れた。
それまでの様々な経緯によりこの街の周囲には湖が多く、治水に関しては幸い――皮肉にも――恵まれている。
しかし、さすがにこの雨では都市の処理能力が先に想定許容量を超えてしまったらしい。
セカンドインパクト前のヨーロッパならば、ごくまれに集中豪雨で洪水が起こる国もあった。
しかし、地軸が傾き気候が激しく変わってからと言うものの、一度として洪水が起こった事はない。
作品名:The Evangelion -missing link- 作家名:*咲神トト*