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瑠璃 深月
瑠璃 深月
novelistID. 41971
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夜の木

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泣いてばかりの女の人の周りに風が集まってきました。その風の中から、声がしました。
「泣かないで、キャサリン。僕はここにいるよ。分かるかい? ほら、いま、君のお腹を蹴っただろう。キャサリン、僕は君の子供になるんだ。だから泣かないで。もうこんな悲しい戦争はしないって、世界からはこんな悲しいことがいつかはなくなるって、僕は信じているよ。キャサリン、それは、生まれ変わった僕たちがやっていくんだ。だから、泣かないで。ぼくはいつも君の傍にいるよ」
 その声が話すのを聞いた直後、僕は、死んだ男の人の目の前ではしゃぐ赤ちゃんの元に戻っていました。そして、知らないうちに、僕の手には何かが握られていました。
 僕は、ゆっくり目を開けました。
 目の前には、大きな人がいました。
「手を、開いてみるといい」
 そう言われて、僕は、自分の手を開いて、握っていたものを確かめました。
 僕の手に握られていたのは、きれいな虹色をした香水瓶でした。
 この瓶で、僕のやることはすぐに分かりました。
 僕は、空っぽの瓶に泉の水を汲み取りました。そして、大樹の根元に行くと、その水を一気に根元に振り掛けました。
 すると、どうでしょう。
 今まで見たこともないくらい美しい光景が、僕の目の前で広がりました。
 大樹の中心から光のようなまぶしいものが出て、大樹は根元から葉の一枚一枚まできれいな色を取り戻したのです。そして、一気に、真っ白なきれいな花を枝の先にたくさんつけました。すると、一陣の風が吹いて、花は次々に散り、その花びらは風に乗って天に散りばめられて、きれいな夜空に輝く星になったのです。
 花が散ると、今度は実ができました。
 銀色のその実は、たくさんの枝にたわわに実りました。
 僕と大きな人は、二人で一緒に銀色の実を採って、絞ってジュースにすると、根元で眠っていた月の女神様に飲ませてあげました。すると、月の女神様はその美しさだけでなく、元気も取り戻して、僕に何度も「ありがとう」を言ってくれました。そして、女神様が眠っている間、ずっと草原からこの森を守って、女神様の受けた毒を進行させないようにがんばっていたこの世界に感謝をこめて、大きな人に熱いキスをしました。
 そうやっている間にも、木は、その実をすぐに成熟させて、十分に熟した実を地面に落として行きました。熟した実はたくさんの果汁を地面にいきわたらせました。こうして、銀色に染まった地面は、地上から見ると月に照らされて輝く銀色の夜光雲になったのです。
作品名:夜の木 作家名:瑠璃 深月