リーンカーネーション・サーガ
「何!何か得体のしれない能力を秘めているというのか?」
影は無表情で頷き
「御意」
といってきた。
私はしばし考えこみ、影に対して、
「分かった、密かに観察し、その能力を見極めよ。」
すると影は
「御意」
と返事をすると、また、壁の影に消えていった。
今、王室では、第一王子「エギル・ウォーター・ペンドラゴン」派と
第二王子「アルベール・ウォーター・ペンドラゴン」派に分かれて
次期王位の覇権争いが水面下で起こっている。
エギル王子は、直情型で、思慮に欠けるところがあり、王としての資質はあまりないと噂されている。
だが、エギル王子は、「地震騎士団」の将軍でもあり、
母の第一王妃の「ヘカテリーナ王妃」は、「イディオム家」出身である。
「イディオム家」は、5大貴族の中でも、武器貿易などで莫大な富を蓄えてる、
今一番(発言力)権力がある。
その、「イディオム家」が、エギル王子の後ろ盾となっている。
つづいて第二王子、アルベール王子は、エギル王子とは真逆に近く、魔法に長けて、思慮深く、人望もあり、
「魔法師学院」を主席で卒業した秀才で知られている。
私としては、粗雑で考えの浅い、第一王子が王位に就く事は、この国の為にならないと確信している。
今のエルウィン王国は貿易都市国家として、周辺諸国とは良い関係だ。
また、第三王子の「マイア・ウォーター・ペンドラゴン」は、まだ、7歳で今王位につかせる
ことは、得策とは考えずらい。
第四王子は、論外である。
だが、エギル王子は、周辺諸国を平定して、国力を増大すべきと常日頃、発言している。
これは、北の大国「ウルク帝国」が最近、近隣諸国を平定してきていることからの提案ではある。
しかし、「ウルク帝国」と我が国の間には「モンゴール公国」とピザン山脈がある為、
すぐに、我が国への侵略があるとは考えにくい。
まあ、陸路がダメなので海路から攻めてくるという手もあるが、海軍ならば、我が国は、
地上最強を誇っているといっても過言ではない。
その為、我が国からの侵略は、今の近隣諸国との友好関係上、
あまりに危険な思想だと私は思う。
これは、「濡れ衣を着せてでも」失脚して頂かなければならないと考えている。
今回の第四王子暗殺計画は、能力(魔法力)至上主義を常に訴えている
エギル王子に罪を被せ、王国に無用な者を排除する一石二鳥の案だったのだが・・
「なかなか事はうまく運ばないようだ。」
と、私は一人自問した。
[脱出]
僕は、昨日の暗殺の事を考えていた。
ここ数か月、国王の具合が悪く、臥せっていて、容体は悪くなる一方だという話を、
メイド達から聞いていた。
その王へのお見舞いで、最近、母も留守がちなのも気になるが・・・
その為、次期国王の第一王子
「確か、エギル王子だったか?」
が近じか王位につくのではと噂されている。
しかし、エギル王子の評判はすこぶるよろしくない。
それに対して、第二王子のアルベール王子の評判はかなり好評価だと聞いている。
こういった場合、大体王位がすんなり決まるとは思えない・・・
ならば、第一王子派も第二王子派もなんらかの策略を取ってきそうだ・・・
昨日の暗殺未遂は、そういった策略(陰謀?)の一つと取っていいのではないだろうか・・
僕は、父王に疎まれているが、母は父王に好かれている。
これを利用して、
「陛下は一番愛している、第四王妃の子供を次期国王にと考えている」といった噂を流し、
それに対して、不満を持った・・・
おそらく、第一王子派あたりに、罪をなすりつける形で、暗殺する・・・といったような事があっても
おかしくないように思う。
しかも、僕は、無色で無能力とされているのだから、王国にとってもいなくても問題無いどころか、
かえって都合が良いと判断されるだろう。
ならば、僕としては、何とかここから脱出する手段を考えておかないと、みすみす殺されてしまいかねない。
まず、何とか無難にすませられそうな方法としては・・・
「1、母方の親戚に養子にしてもらう、もしくは、預けてもらう。」
「2、魔法学院に入学させてもらう(全寮制である為)」
後、これはあまり使いたくないが・・・
「3、事故を装って、死んだ事にする」
3は、かなりリスクがある・・・
方法としては、城壁の海側を散歩させてもらい、歩いていて、僕が誤って城壁の外に落ちてしまう
というものだ。
これは、僕の能力(Rule space)を使えば、壁や岩に当たることもないし、おそらく、
海の中でも自由に動けるだろう。
ただ、今の僕の能力の発動時間の最長が15分程度だからそれまでに岸につかないと
助からない可能性はあるが・・・
あと、この方法は、ただ脱出するだけで、その後の生活などは行き当たりばったりだ・・
自分の能力などを明かして、リオン先生の実家にでもかくまってもらうのは・・・
無理かな?
下手したら反逆罪などにされる可能性もあるし・・・
事故を装うなら・・・生活などは自力で考えないとか?
まずは、一番無難な、案1を母が陛下の見舞から帰られたら話てみるべきか・・・
などと考えていた。
だが、その夜、母は屋敷に帰ってこなかった。
執事の話によると、国王陛下の容体が急変されたとの事だった。
各王子、王妃は緊急に、国王陛下の寝室に集まっているとの話だった。
ちなみに自分は、呼ばれていないとの事だ。
この後に及んでも、自分は毛嫌いされているのかと思うとやるせなくなる。
そんな夜だったので、僕は寝付けないでいた。
すると遠くから、この世界では聞かない機械音?のような音が聞こえてきた。
その音はどんどん近づいてくる。
何の音か気になったので、窓を開けて音のする方角の空を見た。
だが、この屋敷は、城壁内にあるので、遠くまでは、見通せない。
しかたが無いので、上を見上げると不意に爆音がして飛行機?が通りすぎた!
「飛行機」はこの世界には存在しないことを、周りの人の話から聞いていたので、
「そんなバカな!」
と僕は知らずに叫んでいた。
その飛行機というより爆撃機?は真上を通りすぎると城の上に何かを落とした!
僕は「ヤバい!」と思い、とっさに窓から離れ、身を伏せた。
すると、すさまじい爆音と振動と光が外から数回にわたって襲ってくるのを感じた。
その振動が収まるのを待って、窓の外を確かめる。
すると城は半壊し、炎があたりを覆っていた!
まさに、
「地獄絵図・・・だ・・」
と呟いた時、ドアが勢いよく開き、
「リーン殿下ご無事ですか?!」
「リーン王子様ご無事ですか!」
「王子殿下ご無事ですか!」と執事とメイドと警備の従士がそれぞれ叫びながら
入ってきた。
僕は、
「僕は大丈夫です!
しかし、城が大変な事になっています!
早く、母たちを助けに行かないと!」
と叫んだ。
執事達は、顔を見合わせどうすべきか思い悩んでいる。
すると、不意にまた、飛行機のエンジン音が聞こえてきた!
さっきの飛行機は通り過ぎたばかりだから、戻ってくるのが早すぎる!
他にも何機かいるのか?!
僕は、みんなに叫んだ!
「まずい!
また、攻撃が来ます!
みんな伏せて!」
複数機が来るのなら、この離宮も安心ではないと思い、
作品名:リーンカーネーション・サーガ 作家名:八咫烏