自作お題小説『甘』
キャラメル
3月14日
女の子の想いに、男の子が返事をする日。
義理には義理を
精一杯の想いには、精一杯の返事を
大好きなあなた……
あなたの返事はなぁに?
「ん。」
ムードも何もない部屋の中。
あなたは短くそう言って、包みを渡してくる。
「何?」
私はそれが何かなんて…分かっていたけど、聞いてみる。
「お返し。チョコの。」
単語を並べただけのぶっきら棒な返事。
「ふふっ。ありがと。」
私は小さく笑って受け取った。
だって…あなたがそういう態度の時は照れている証拠。
「開けていい?」
返事は返ってこなかったけど、
私はいそいそと包み紙に手をかけた。
「…………。」
(キャラメル包みだ)
包装紙の包み方。
乱雑で…誰が包んだのか、一目瞭然。
ちらっとあなたを盗み見たけど、
あなたは何食わぬ顔で雑誌を広げていた。
「ふふ……」
あなたの態度に小さく笑う。
だってその雑誌……見てないでしょう?
雑誌…上下逆さまだよ?
「ありがと。」
そう告げると、先ほどと同じ短い返事が返ってくる。
キャラメル包みの包装紙を、綺麗に開けて中を覗く。
「………!!」
中に入っていたものに一瞬驚いて……
声を出して笑った。
「あははっ。」
あなたが訝しげな目で見てくるから…
私は「ごめん、何でもないよ。」と手を振った。
首をかしげながら再び雑誌を見たあなたの背中を見て
中の一つを手に取った。
(キャラメル包みの中の……キャラメル……)
思い返して……もう一度笑った……
終わり
100603