自作お題小説『甘』
キャンディ
有名大学在籍。
成績優秀。
誇れる学歴。
すんなり決まった就職先。
全てが順調に進んでた
何もかも思い通りに進んでいるはずだった
それなのに……
どうして俺はこんなトコロにいるんだろう?
ほぼ決まっていたはずの内定が
つい先ほど取り消され
またゼロからの就職活動。
怒りよりも、悲しみよりも、
ただただ絶望。
小さな公演のベンチに座って頭を抱えた。
どこぞのリストラされたサラリーマンだ。
なんて思って自嘲した。
「………?」
目の前からした視線。
気付いて顔を上げると、
小学生の女の子がこちらをじっと見ていた。
時間帯からして、帰宅途中だろう。
「何?」
俺はなるべく笑顔で言った。
「おじちゃん、元気ないね?おなか減ってるの?」
少女の言葉に俺は絶句。
「おじちゃん……って……俺はまだにじゅう……」
俺の言葉を無視して
少女はランドセルを下ろしていた。
ランドセルに手を突っ込んで、何かを探している様子。
「………!!」
満面の笑顔で、俺に手を差し出してくる。
「???」
俺が不思議そうな顔で見ていると
少女は更に手を前に突き出して
『あげる。』と言った。
訳も分からず手を出した俺の手のひらに
小さな飴玉が一つ転がる。
手のひらに乗ったそれを呆然と見ていると
「元気出してね、おじちゃん。」
そう笑った少女が手を振って駆けていった。
「ったく……最近のガキは……。」
俺は苦笑して、飴玉を手の上で転がした。
「………。」
俺は無言で飴玉を袋から出して、口に放り投げた。
「あ〜ぁ、人生もこんくらい甘きゃぁいいのに。」
肩を揺らせて笑った後、俺は気合を入れて立ち上がる。
「……っしゃーーー!!頑張るかっ!!!」
少女が駆けていった先
当にその姿は見えなくなっていたが
「俺はまだまだ若いっ!!お兄ちゃんと呼べーーーーっ!!」
大声で叫んだ。
終わり
10/09/22