自作お題小説『甘』
ラズベリーシェイク
暑い日差しの中。
君との待ち合わせ。
俺はずいぶん前から携帯と睨めっこ。
「遅いなぁ。」
小さく呟きながら周りをキョロキョロ。
(何かあったのかな?)
急に不安がよぎって立ち上がる。
「きゃっ!どうしたの?」
真後ろからした君の声。
俺は勢いよく振り返る。
「どうしたもこうしたもねーだろ?
遅いから何かあったのかと思ったじゃん?」
そう言った俺に君は悪びれもなく「ごめん、ごめん。」と笑った。
「ん?何持ってんだ?」
君の手の中にあるものを見つけて問いかける。
「ん〜シェイク。」
ストローを口に咥えたままの君がそう言った。
「シェイク?まさかそれ買ってて遅れたのかよ?」
プチ切れな俺にお構い無しの君。
「だってラズベリーシェイクだよ?」
「は?」
意味不明な君の返答に思わず変な声が漏れた。
「期間限定なの。」
相変わらずケロッとして言うから……
怒る気も失せました……。
(そんな甘いのか酸っぱいのか、分かんねぇ様なもんに俺は負けたのか?)
ガクリとうな垂れる俺の肩に、君の手が乗る。
「ん?」
顔を上げると、君がいきなり持っていたストローを俺の口に入れてきた。
「甘くておいしいよ?」
「………。」
あんまりにも可愛く笑うから……
何故だか分かんねぇけど…
無性にイラッとして、
口に含んだストをーを、思い切り吸い込んだ。
「あぁぁぁぁ〜っ!」
君は慌ててストローを奪い返して睨んでくる。
「ひどーーいっ!」
頬を膨らませた君。
俺は意地悪く笑って……
「酸っぱいじゃねぇーかっ!!」
なんて……
「味覚おかしいんじゃな〜い?」
「こっちの台詞だっ!!」
二人して笑って歩き出した。
終わり 100303