自作お題小説『甘』
チョコレート
大好きで……
どうしようも無い位大好きで……
だけど…やっぱり言えなくて……
傍にいたくて……
1mmも離れたくなくて……
だけど…本当は近づくことも出来ない
「根性なし……。」
呟いて目の前のグラスを、指で弾いた。
透明なワイングラスの中に…
欠片を一つ落とす……
硬くないそれは…
想像していたカランという軽快な音をさせず
グラスに落ちた…
まぶしてある粉が…グラスの底に溜まってた
もう一つつまんで落したそれは…
先ほどと変わらない音をさせて落ちて行く
底に溜まっていくパウダーが…私の想いみたい……
と思うと…ひどく虚しくなった……
「好きだと言えたら……楽なのに……。」
呟いて両の目を覆った
肩肘を突いて摘んだヒトカケラ
グラスの中から取り出して…口に入れた
最初に広がる苦味
すぐ後に来たクリーミィな甘み
「甘………。」
苦くて甘いそれは……青春の味
甘くて苦いそれは……初恋の味
終わり 09/12/06