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自作お題小説『甘』

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アイス
「つまんない。」

休日の昼下がり。
急に発した君の言葉。

俺はビクリとして君を見る。


「何かおもしろい事して。」

突拍子も無い君の無茶振り。

「え…そんな急に言われても…。」

オドオドと視線をさまよわせながら
君が興味を示しそうなものを探す。

でも所詮は狭い部屋の中。
見慣れたそれらは、全くもって使えないものばかり。


「つまんない男。」

君はそれだけ言って俺から目を逸らした。


あぁ……機嫌を損ねてしまった………

そう思っても俺にはどうする事も出来なくて
結局取った最終手段。



「この間コンビニで新発売のアイスがあって…
 買ってみたんだけど……食べる?」

俺の言葉に君は肩を揺らせて
背中を向けたまま『食べる』とぶっきら棒に言った。


俺は足早に冷凍庫に向かって、目的のものを取り出す。

「はい。」

なるべく満面の笑顔で君にそれを渡すと
君は黙って受け取って、蓋を開けた。



「どう?」
恐る恐る聞くと………

「ん。」
スプーンに乗せたアイスを差し出された。

俺は笑顔でそれを口に含んだ。

「ん、うまい。」

そう言う俺に君は『まぁまぁね』と
悪態を付くが、その手が止まることは無かった。



「好きだよ。」
アイスを口に運び続ける君に告げた。

君は無言で俺を見てから、ため息を付いて
スプーンに乗ったアイスをもう一度差し出してくる。

「いやっ……さっきの『好き』は、アイスが好きとかじゃなくて……。」

焦りながら言った俺の口に
君は乱暴にそのスプーンを押し込んで……

「そんなの知ってる。」
と背中を向けた。



口の中に広がった甘みと
君の赤くなった耳に、自然と口元が緩んだ。


どんなに冷たくても……
口にしたらやっぱり甘くて……

君の大好きなそれは……
何だか君みたいだ……と思った……


終わり  (壊)意味を成さない取説 連動

09/04/05
作品名:自作お題小説『甘』 作家名:雄麒