自作お題小説『壊』
音のはずれたオルゴール
♪ ♪ ♪〜
一人きりの部屋。
意味も無く開けたジュエリーケース。
何処へ行く訳でもないから
宝石なんて着ける必要ないのに……
開いた小箱。
途端に鳴り出すオルゴール。
♪ ♪ ♪〜
あぁ……この曲は何て曲だったっけ?
ボンヤリ思う。
歌詞は出てくるのに、
曲名がどうしても出てこなくて…もどかしかった。
キラキラ光る宝石を見ながら、
オルゴールに合わせて口ずさむ。
「〜〜♪〜〜〜〜♪」
オルゴールからビィンッと嫌な音がして口を止めた。
サビに入る一歩手前。
一番いい所なのに……
ピンがおかしくなってるのかな?
少しずれただけなのに……
こんなにも嫌な音になるなんて……
耳に残る不協和音。
眉間に皺を寄せながら、小箱を見つめた。
「あぁ……何かと一緒ね……」
ポツリと呟いて、小さく笑った。
ホンの小さなずれでも……
二人を引き裂くのは簡単だった
ホンの小さな音でも……
不協和音には変わりない
ずれたその時から…輝きを失ってしまうのよ
オルゴールも……
あなたも……
どんなに昨日まで…綺麗な音色を奏でていても
たった一つのずれが…
全てをぶち壊す…
「あぁ……。」
ゆっくり顔を上げて、宙を仰いだ。
「yesterday once moreだ……。」
呟いて…小箱を閉じた。
終わり 08/12/09