自作お題小説『壊』
空っぽの砂時計
机の上の小さな砂時計
計れた時間は…確か三分間
ゆっくりとそれを手にとって逆さまにした。
耳の奥でサラサラと砂の落ちる音
目の前の砂時計からは
一粒の砂も落ちてきやしない
だって……
全部取り除いてしまったから
君と同じ……
全部無くなってしまったから
僕はクスリと笑って
何度も砂時計をひっくり返す。
中に入っていたピンクの砂は
僕の足元に散らばっている。
僕はそれを踏みつけながら立ち上がる。
空っぽの砂時計を手にしたまま。
「ほら……見てごらん。」
僕は空っぽの砂時計を君に見せる。
僕のベッドに眠っている君。
「空っぽになっちゃった。」
僕は笑いながら瓶に口付けをして
その後君に口付ける。
「君と同じだね。」
僕は空っぽになった砂時計と
同じように空っぽになった君の亡骸を
両手いっぱいに抱き締めて眠った
ベッドの下にはピンクの砂
僕の腕の中には真っ赤な君
終わり 08/12/21