小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

自作お題小説『色』

INDEX|6ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 

ブラッティオレンジのカクテル
カラン

扉のベルが小さく音を立てて、こじんまりとした店内に鳴り響く。


「いらっしゃいませ。」
黒いタキシード風の制服を着たバーテンダーが、丁寧にお辞儀をした。

俺達はカウンターに座って…


「こんな店初めてだから緊張する。」
君が少しおどおどしながら言うから、

「平気だよ。普通の飲み屋とそう変わらないさ。」
俺は小さく笑った。


「本日はいかが致しましょうか?」
カウンターごしにバーテンが聞いてくる。

「じゃぁ僕はいつものやつを…」
そう告げると、『かしこまりました』とバーテン。


「えっと…私は…」
戸惑って俺をちらっと見上げた君。

「彼女には純血の涙を…」
俺の言葉にバーテンは何も言わずに小さくお辞儀をした。


店内に心地よく聞こえるジャズの音楽。
落ち着いた雰囲気のテーブルに、頼んだカクテルが置かれる。


「綺麗な色…」
君がポソリと呟いた。

グラスの中には、赤と黒の真ん中くらいの色をしたカクテル。


「これはブラッティオレンジのカクテルだよ。」

俺の言葉に君は『へ〜』とグラスの中を覗き込んだ。


君は知っているかい?
処女の血液は純粋で美しい事を…

君は気付いているかい?
君にもその血が流れていることを…


「いい夜にしよう。」
グラスを持ち上げた俺に気付いて、君も慌てて目の前のそれを持ち上げた。

「「乾杯」」
二人のグラスが重なって、小さく音を奏でる。


君の唇がグラスに触れて…
赤黒い液体がその唇の奥に消えていく…

純血の涙は…
君の中に…


純血は…
よりその濃度を増して…
君と一つになる


俺の中の…
汚れた血も…
全て…飲み込んでくれないか?

君の中の純血で…
この汚らしい血を…浄化してくれないか?


「もう一度…乾杯をしようか?」

そう言った俺に、君は笑顔で頷いた。

終わり 08/08/11
作品名:自作お題小説『色』 作家名:雄麒