自作お題小説『色』
虹色のマフラー
「寒〜いっ!」
隣を歩く君。
パタパタと足踏みをする。
「そんなんで暖かくなんのかよ?」
俺は笑いながら君の一歩後ろを歩く。
「うるさいなぁ、ちょっとは変わるかもしんないじゃん!」
鼻を真っ赤にしながら君が膨れる。
君のお気に入りのマフラーに口元を隠すその姿が愛らしい。
「何?」
君を見てニヤける俺を訝し気な目で見てくるから…
「べ〜つに♪」
なんてまたニヤニヤ。
「気持ち悪い。」
そっぽを向きながら歩き出す君の手を捕まえて…
「ほら…こっちの方が暖かいだろ?」
その手を強く握った。
「ふん…」
小さく鼻を鳴らせた君が可笑しくて…
マフラーの下に隠れた真っ赤な耳が愛しくて…
「ふふ…」
小さく笑った。
「何?」
君が睨み付けてくるから、少し焦って見つめた前方。
「あっ…。」
俺の声に君もつられて前を見る。
「うわぁ!」
歓喜の声と同時に走り出した君。
離れた手がひやりと冷たかったけど…
君の笑顔には適わないなと実感。
俺達の目の前には色とりどりのイルミネーションが広がっていた。
キラキラ光る電光色が、君の真っ白のマフラーに映し出されて…
その白を七色に変える。
はしゃぎ回る君の腕を捕まえて、その体ごと抱きしめた。
「あんまりはしゃぐと転ぶぞ。」
なんて…ホントは俺がくっついていたいだけだったりするんだけど…
「じゃぁ…ちゃんと捕まえといてよね。」
体を預けながら悪態を付くから…
より一層力を込めて抱きしめてあげる。
ちょっと口の悪いお姫様
俺だけのお姫様
恥ずかしがり屋のお姫様
甘えん坊のお姫様
さぁてと…帰るとしましょうか?
二人のお城へ…
手を繋いで…
虹色のマフラーをして…
終わり 08/08/20 ぐはぁ…時期はずれ…