自作お題小説『色』
ダークホワイトの帰り道 3/3
夕暮れ…。一人歩く帰り道。
オレンジの夕日が地平線の下に消え
所々の街灯が、思い出したようにチカチカと灯りだす。
(暗くなるの…早くなったな)
そんな事を考えて、もう冬になるな。と実感。
「…………ちっ。」
不意に昼間の事が頭をよぎって、自然に出た舌打ち。
重ねた唇
驚いた顔
『すみません』
あいつの口から出たいつもの言葉。
思い出すだけで、胸の辺りがモヤモヤする。
◆ ◆ ◆
夕闇…。ゆっくり歩く帰り道。
遠くの方で街灯が、ボンヤリ光る。
(こんな遅くまで…何してるんだろ?)
誰に問いかけるでもなく、呟いた言葉。
急にされたキス
止まった思考
『さっきから謝ってばっかだな?』
眉間に皺を寄せながら言った。
悲しいのか…
悔しいのか…
判らなかったけど…涙が込み上げてきた。
◆ ◆ ◆
目の前に人の気配をかんじて、顔を上げる。
「「あっ。」」
互いに立ち止まって、小さく声を漏らす。
どうしてこんな所で会ってしまうんだろう?
今…一番会いたくない人。
暫く時が止まったように感じて…
「!?」
頬に当ったものにビクリとした。
「あ…雪?」
相手がそう呟くから、つられて空を見上げると
パラパラと雪が降り出していた。
真っ黒になった空から、白い粒がハラハラと落ちてくる。
絶え間なく湧き出る白。
その幻想的な風景に、思わず口元が緩む。
自然現象に目を奪われているのを
相手に気付かれて、何だか妙に恥ずかしさを覚える。
(サヨナラ位…言うべきかな?)
下を向いて考える。
(今日のこと…謝っとくべきかな?)
横を向いて迷う。
「「あっ…。」」
同じタイミングで口を開いて、思わず顔を見合わせる。
「その…今日…悪かったな…。」
ぶっきら棒だけど…素直に出た。
「い…いいえ。」
少し驚いて、両手を目の前で振る。
(何だ…やけにスッとしたじゃねーか)
心のつかえが取れたみたいに、気持ちが楽になる。
(何だろう?すごくドキドキする)
昼間の事を思い出して、顔が赤くなる。
「あ…あの…じゃぁ…また明日。」
ペコリとお辞儀をして、歩き出す。
「おう…じゃぁな。」
片手を挙げて、歩き出す。
足取りの軽くなった帰り道。
お前が白で…
貴方が黒で…
全く正反対だけど…
似ても似つかない二人だけど…
もっとお前を知りたくなった…
貴方の怖いイメージが無くなった…
そんな二人の帰り道
お前と…
貴方と…
混ざり合った…二人の…ダークホワイトの帰り道……
終わり 08/10/09
色シリーズの白・黒・ダークホワイトの三部作は、出版社のコンテストに出しました。
結果は残念ながら落選でしたが、これからもがんばりたいと思いますので
今後もご愛顧頂ければ幸いです。 雄麒