自作お題小説『色』
漆黒の髪 2/3
勉強なんてする気も無くて…
ましてや静かに本を読むなんて ガラにも無くて…
仲間なんて言えるか言えないか わからねぇ連中と
毎日バカやってんのが 無性に楽しくて…
ただ…何となく学校に来てた
だけど最近 学校に来る理由がもう一つ増えた。
クラスの中で一人ポツンと座る黒い髪。
白い肌は外で遊んだりしないんだろう
不健康さをこれでもかと言わんばかりに醸し出していた。
おどおどした態度。
ウジウジした性格。
読書が趣味だなんて…どんだけ根暗なんだよ。
最初のうちは見るたびにイライラしてた。
だけど…
いつの間にか、お前を目で追っている自分に気付く。
(何で俺があんなヤツに…)
そう思っても、教室に入ると
無意識にお前を探してしまうんだ。
日差しの暖かい午後。
適当に飯を食って、俺はある教室の扉を開ける。
この教室を選んだのなんて、理由は無い。
静かで誰も来ないから。そんな理由だ。
別にあいつを待ってるだとか…
ここにいれば来るかもだとか…
そんなの俺には関係なかった。
キョロキョロとあたりを見渡して、見つけた絶好のポイント。
窓とカーテンの隙間。
ドッカリと寝そべって目を閉じる。
真上にある太陽からの日差しが暖かい。
暫くして入り口の扉の開く音。
俺は息を殺して…だけど…意識は集中させて…
(やっぱり来た…)
カーテン越しに見えたお前の姿。
不意に吹いた風でカーテンが舞い上がって、お前と目が合う。
お前は驚いた顔で、俺を見ていた。
「何見てんだよ?」
上半身を起こして出した、低めの声。
お前の肩がビクリと揺れて「あ…すみません」と言った。
「どんだけ読むんだよ。」
続かない会話に、お前の腕の中の本を見て出た言葉。
その言葉にお前はまた謝って…。
俺は無性にイラッとした。
そのまま同じ場所に寝転んで、無視を決め込む。
暖かい日差しに少しだけウトウトした俺の耳に
遠くの方でしたチャイムの音。
(あ〜このままサボろう。)
頭の隅でボンヤリ考えた。
「あの…予鈴…」
その声で目を開けると、
恐る恐るカーテンの中を覗き込むお前と目が合った。
「すみません…」
その言葉で俺の我慢は、限界に達した。
「えっ?何?」
お前の腕を力いっぱい握って、そのまま引き寄せた。
目を白黒させるお前が、妙に可笑しくて…
「さっきからさ、謝ってばっかだな?」
お前の目の前で言った。
「す…すみません。」
もう条件反射なんだろう。
お前のその顔に、俺の中の悪戯心に火が点いた。
力任せに抱き締めてしたキス。
お前の腕から小難しい本がバタバタと落ちる。
「いってぇ…。」
思い出したように抵抗をしたお前に突き飛ばされて、窓枠に肩をぶつけた。
「すみませんっ!」
お前の言葉に、さっき納まったムカムカが戻ってくる。
(何でこの状況で、お前が謝るんだよ?)
理不尽な怒りが俺の中を埋め尽くす。
お前は口元を押さえながら、この場から逃げるように走り去った。
足元に散らばった数冊の本…
パタパタと遠くなってく足音…
二度目のチャイムが鳴り響いて…
俺はもう一度その場に寝転んだ。
「…………ちっ。」
間を置いて付いた舌打ち。
(何で…こんなに気になんだよ…)
終わり 08/10/01