自作お題小説『色』
(色)エメラルドグリーンの太陽
「明日は晴れるかなぁ?」
隣で眠っているはずの君から、独り言とも取れるような問い掛け。
「何で?」
明日どこかに行く用事でもあるのかと思い、俺も問い掛ける。
「ん〜、別に…ただ何となく…。」
君がそう言うから…
何だか気になって、読んでいた雑誌から目を離して君の方に向き直る。
そんな俺に君は気付いて…
君も体の向きを変えて、俺を見た。
妙に近い互いの距離が少し恥ずかしくて、くすぐったかった。
「ねぇ…。」
おでこ同士がくっつくんじゃないかの距離で、君が俺に問い掛ける。
「お日様って…何色なのかな?」
「お日様?太陽の事?」
俺が問うと、目の前の君が小さく頷いた。
「ん〜。」
俺は頭の中で太陽を想像して…
「赤とか…オレンジじゃないの?」と答える。
「ふ〜ん。」
腑に落ちない感じの君の相槌に、「普通はそうじゃねぇ?」と俺。
「もしもさ…」
君の唇がゆっくり動く。
「もしも…明日目が覚めて窓を開けた時、見上げた太陽がエメラルドグリーンになってたらどうする?」
「は?」
突拍子も無い君の問いかけに、思わず可笑しな声が出た。
「それは普通じゃ無いって事なのかな?」
そう言った君の瞳が、やけに悲しそうに伏せるから…
「太陽ってさ、直接見る事出来ないじゃん?」
俺の問いに君は顔を上げた。
「だから本当の色が判る人なんていないんだよ。
人によっては毎日エメラルドグリーンに見えてる人だっているかもしんねぇし…」
段々自分でも何言ってるのか判んなくなってきてるけど…
「そっか…」
君が小さく笑ったから、ま・いっか…って思った。
普通に縛られる必要なんてないさ…
だって…
今過ごしてるこの時が普通なんだから…
君が目の前にいる事が普通なんだから…
例え明日エメラルドグリーンの太陽が昇って来ても…
俺は笑ってやるよ
お前の隣で笑い続けてやるよ
これが普通なんだって…
終わり